フィリップ・ギヨーム
Philippe Guillaume, Modartt - Pianoteq
フィリップ・ギヨーム氏はピアノの専門家、調律師として活躍する傍ら、ピアノ調律の限界を乗り越えるべく、「Pianoteq」という革新的なインストゥルメントを開発するに至りました。そんな彼にIMSTAやソフトウェアの海賊行為についてお聞きしました。
フィリップさん、まずは簡単に自己紹介してもらえますか?
1976年に調律の仕事を始め、11年後の1987年、University Paul Sabatierに進学しました。1994年からフランス、トゥルーズにあるINSA(l’Institut National des Sciences Appliquees)で応用数理学の学部長を務めています。同校の研究所であるIMT (Institute of Mathematics of Toulouse) で同僚だったジュリアン・ポミエールとピアノ・モデリングの開発を始めたのは、さらに10年後のことです。
これら研究で培ったデジタルピアノのテクノロジーを現実の製品とするべく、2006年にMODARTT社を立ち上げたのです。
音楽に関わりはじめたきっかけは?
私の父は本当に音楽が好きで、家では常にあらゆる種類のレコードがかかっていましたね、クラシック、ブルース、フォーク、タンゴと。ピアノを習い始めたのが11歳のときでした。当時誰かが弾いていたショパンのエチュード、23番イ短調でした。演奏を聴いたときの衝撃は大きかったですね!もちろんこの曲を弾けるようになりたい、と思いました。ピアノが好きで、それに関わる仕事として調律師を選んだのです。トゥールーズにあるピアノ販売店や、自分が経営していたリペアショップで数多くの古いピアノをリストアしましたよ。コンサートや音楽祭などでも偉大な演奏家、アーティストのためにグランドピアノを調律しました。
しかし彼らの要求を完璧に満たすピアノ・サウンドのコントロールができない、というのは常に不満でしたね。例えばグランドピアノのボイシングを調整するとき、多少なりとも音色自体のコントロールが可能なんですが、それでも6つ目の倍音だけを6dB上げるなんてことはできないのです。どうすればそんなことが可能になるだろう、と。自由に音色を操れる、そんな楽器を夢想していたんです。
でも当時のコンピュータでそういった処理を行うには、マシンパワーが圧倒的に足りなかった。20年後、Pianoteqを作り出したことで真の意味でピアノ・サウンドの完全な操作が可能になったというわけです。
いまでも音楽を演奏する時間はありますか?
そうですね、最近はPianoteqをテストする時間をあてています!新しいプリセットを開発するときなど、Pianoteqを演奏していると時間が過ぎるのも忘れて没頭してしまいしますね。でも少しでもおかしいと感じたら、また現実の世界に戻って改良を加えたりするんです。
MODARTTでは、ソフトウェア海賊行為に対して、どのように対処していますか?
Pianoteqには非常に高精度なプロテクションが採用されています。さらに新しいバージョンのリリース、改良も常に行っています。クラックされたバージョンが出回る頃には、それは既に古い製品になっていると。難しいのは改良されたものをさらに向上させる、ということです。
IMSTAに参加される上で重要と感じていることはなんですか?
IMSTAの音楽ソフトウェア・ユーザを啓蒙していこうという姿勢、そして多くの企業、団体からのサポートがあればこうした海賊行為は減らせる、と信じています。IMSTAに多くの企業が参画し、影響力を持つことでユーザ、開発者双方にとって大きな利益になるはずです。
MODARTTのような会社が、IMSTAメンバーになることによる利点は何でしょう?
最後に、皆さんにしている質問です。海賊行為をしている人たちに対して、伝えたいことはありますか?
我々は海賊行為や製品がクラックされることを常に心配しています。これらはMODARTTのような小さな企業にとって本当に死活問題だからです。製品に対して正当な対価が払われなかったというだけで、有望な技術やプロジェクトのための費用が賄えず継続を断念しなくてはいけないとなれば、これは非常に残念なことです。
開発者も片手間にソフトウェアを作っているわけではありませんし、製品に対価が支払われなければビジネスを続けていくことはできません。海賊行為が減り、この業界のセキュリティが高まることで、さらなる新製品の開発ができるのですから。
Modarttチーム、Ramonville Saint Agne、France